美術科ブログ
美術科SSH特別講義「描画材料と科学」
9月9日は1年生の進路ガイダンス講座がありました。午前中は美術科卒業生の漫画家ゴトウマサフミさんの講話をはじめ、同窓会の皆様の御支援でさまざまな職業に関する貴重なお話を聞くことが出来ました。
美術科は午後から、ホルベイン画材株式会社から講師をお招きしてアクリル絵の具のメディウムと油彩画に使うオイルを中心に、絵の具について科学的に考える特別講義を行いました。
画像にもありますが、絵の具は「色の粉」と「のり」でできています。その「のり」の部分が何かで、油絵の具、水彩絵の具、アクリル絵の具と区別されます。
ずらり並んでいるのはアクリル絵の具に混ぜて使うメディウムです。絵の具に混ぜることで、艶やかなレイヤーをつくったり、砂ような質感をつくることが出来ます。素人は何が何やらの種類の多さですが、その一つ一つを分析できるシートにナイフで塗っていきます。
まるでクリームのような質感のものもあります。店頭や個人ではなかなかできないことですね。
ジグザクの線は下地材でどう色が変化してみえるかがわかります。一番下は絵の具にどんなメディウムを混ぜるとどう違って見えるかがわかります。このシートはずっと大切に持っていてほしいです。
最後に希望者対象に油彩画の揮発油と乾性油の違いを試します。揮発油と乾性油を調合したペインティングオイルも様々な種類がありますね。生徒たちは匂いの違いをあれこれ例えていました。また、さらっとしていたり、とろっとしていたり質感の違いも観察できました。
これも乾燥すると違いがクリアになります。
近代になってチューブ絵の具ができるまで、画家は絵の具の調合が出来なければ絵が描けませんでした。画家は科学者・技術者でなければならなかったのです。現代の私たちは何の苦労もなく絵が描ける時代ですか、それでも今回の特別授業で大きな学びがありました。
苦労して描いた作品がひび割れたり、剥落するのには科学的裏付けがあります。この講演を聞いた生徒たちはそのことをよく理解したのではないでしょうか。また、この実践は10月の美術科1年生九州国立博物館バックヤードツアーにつながります。描画材料に対する正しい科学的知識を持つ人材が多く育てば、熊本地震後、修復を待つ多くの文化財を守る糧になるのではないかと思います。
美術と科学は同じ根っこにあるのだとSSH事業の教育実践を行うたびに気づかされます。