美術科ブログ

技法研究「コラージュデッサン」講評

 期末考査の1週間ほど前になります。1年生、2作目の油彩画に備えて、コラージュデッサンを行いました。
 静物モチーフを囲み、普段なら筆や木炭を持つところ、色とりどりの紙、様々な手触りの素材をボードに張り付けていきます。
 空間を構成する図と地の関係を意識すること、油彩画の持ち味でもある絵の具の重なりを意識することが狙いです。生徒の自評からも完成をイメージし、そのためのプロセスを考え、計画的に実行することの大切さに気付いたことがわかりました。
 感情だけでは絵は描けない。絵を描くことの醍醐味は思考するにもあると生徒たちを見て、感じました。

3年生美術史発表会

3年生美術史選択者によるミニ発表会を行いました。それぞれがテーマを設定し、エッセイを作成し、口頭でのプレゼンテーションを行いました。
 美術科では美術理論を1年次美術史(今年度から美術探究)、3年次鑑賞研究(必修)、美術史(選択)を開講しています。今回は3年間美術を学んだ集大成となるように「私だけが知っている!ここが美術史のターニングポイントだ!!」というテーマで美術史を振り返りました。
 様々なテーマがありましたが、特に①素材の発達から生まれる変化、②西洋の政治・経済・宗教に影響される文化の役割の変化③東西の交流による変化(印象派、浮世絵、明治維新後の文明開化)④現代アートとは何か、が目立ちました。

▲実物投影機を使用しプレゼンしました。彼女は発表内容をKP法でまとめ、簡潔に内容をまとめました。


ノートをそのまま写すこともできます。この発表はスマホによる自撮りを含め、アートと呼ばれる写真の境界線はどこか、という内容です。


▲教科書の年表や図版を活用して、発表を行いました。

 彼らが1年生のころに行った作家研究とポスターセッションよりはるかにかけた時間は短いのですか、課題設定、画像分析、歴史的検証、考察と必要なプロセスをしっかり踏まえた良い探究となりました。


 あと少しの高校生活、充実したものにできるよう、先生たちも応援していますよ。

紙立体~帽子の制作

年生10月のデザイン課題は帽子の制作です。使用してよい素材は白い紙。平面を立体に構成する難しさを味わったようです。

◆デザインにはユーモアも大切

◆衣装や見せ方で作品も魅力をさらに引き出します。

◆丸い形をつくるのは本当に難しそうでした。この作品は細部までこだわったお手本となる作品です。

◆ダイナミックな造形で、インパクトを与えます。はさみや手など具体物の描写も効果的です。

◆鳥と帽子を組み合わせた作品、様々な造形要素が詰まっています。

◆帽子を越えた作品もたくさんありますね。記念撮影です。

子ども美術館「若冲」

 10月29日(日)、熊本県立美術館本館で子ども美術館がありました。第二高校生徒が子ども美術館のお手伝いをするようになって5年、初めて先生役をすることとなりました。

 内容は絵の具とは何かという説明と、先日行った「プルシアンブルー」をつくった化学の実験についてです。これまでのSSHのホルベイン工業の特別授業、熊本大学の博物大名の講演など、様々な事業の結晶となった活動になりました。


1年生12人、初めてでしたが、学芸員さんや美術館ボランティアさんの御指導のおかげで、子どもたちともスムーズにコミュニケーションをとっていたようです。

 この日は、済々黌高校の工藤典子先生も特別講師として参加され、膠(にかわ)がなぜ糊の役割を果たせるのかを証明する、ネバネバ実験もしました。指先に少し膠をつけて、指をくっつけたり話したりすると、とろっとした膠が指にはりつくのです。

 次に岩絵の具を膠で溶き、その指で色を付けていきます。塗り絵の原画はもちろん若冲です。

 カラフルな鳥ができました。岩絵の具の美しさも、感じ取ってくれたようです。

 今回は参加された保護者の方にも胡粉を溶いていただいたり、御協力いただきました。大人でもなかなか日本画体験はできないので、喜んでいただけたでしょうか。

 最後に学芸員さんのお話がありました。若冲は江戸時代の画家ですが、非常に科学的な視点を持った画家であると感じました。美術は美術、歴史、科学、それぞれの分野がそれぞれに探究するだけではなく、お互いにコネクトすることで新しい学びが生まれることを実感しました。

 今年度最後の子ども美術館でした。3歳くらいの小さなお子さんから6年生まで、みんなが楽しめるイベントとなり、こちらも勉強になりました。美術館の皆さん、ボランティアの皆さん、そして参加された子どもたち、保護者の皆さん、ありがとうございます。

「坂本善三美術館展」鑑賞会

10月21日(土)、肥後銀行本店にある肥後の里山ギャラリーで、「坂本善三美術館展」を鑑賞しました。
 郷土の作家であり、“東洋の寡黙”と称された画家・坂本善三の没後30年を記念する展覧会。ただいま、二作目の油絵制作の準備をしている1年生には勉強になることばかりです。
 抽象画のイメージがある坂本善三ですが、初期は静物画をたくさん描いています。この展覧会で坂本善三の変化を見ていくと、どうしてこのような作品を描くようになったのか体感できます。


 写真のとおり、学芸員さんが丁寧に、熱く解説してくださいました。
 10年以上前の新聞に坂本善三は自身の絵に対して「最近私は空間に『すき間』があるのを発見した。そしてその『すき間』自分がいる(平成18年2月25日熊本日日新聞)」と語っていたという話がありました。今回の鑑賞会は、まさに「表現とは何か」、「絵画表現における空間とは何か」を問いかける体験となりました。


 お忙しい中、鑑賞会を開催していただいた肥後の里山ギャラリーの皆様、ありがとうございます。

アートサイエンス~テーマ研究

AS(アートサイエンス)の総合的な学習の時間にあたる領域ではテーマ研究が始まりました。今日は3回目、テーマを決定し、仮説にあたるゴール設定、役割分担を行います。
 美術科1年テーマ研究は「美術史と科学」「材料研究」「震災とデザイン(プロダクトデザイン)」「熊本を元気にするプロジェクト」の四つの大テーマで行います。
 


教えていないのに自分たちでアンケートを作成し、もう集計をしていました。

色彩を考える班

有機的な材料で絵の具が作れないか???


前回のブレインライティングも活用しています。

 

 2年生はそれぞれのテーマで個人研究を行います。


 

 1年次のグループ研究と比べると責任は増えますが、思い切り調べたいことを探究できます。

 テーマ研究は2年生は12月、1年生は1月に発表会を行う予定です。

音楽と美術史

10月24日(火)学校オープンデーの日、美術科1年生は美術探究で美術と音楽のコラボ授業を行いました。27年度の三十六歌仙図屏風と日本音楽、バロックとルネサンス、28年度は印象派の音楽と、音楽史と美術史をリンクさせた実践を重ねています。
 そこでわかるのは、美術も音楽もその時代の課題や特徴を体現していること、論理的に考察することと直感で判断することは両輪であることです。
 さて、今回は新古典主義の巨匠ダヴィッドとロマン主義のジェリコーの作品を比較しました。

 作品をよく理解するための補助線を任意で引き、そこで気が付いたことを発表します。


 ダヴィッドは豪華で整然とした感じ、ジェリコーは重々しい感じ。明暗の対比や登場人物の配置、メインになるモチーフに目線を集める構図の工夫など意見が出ました。


 次にルネサンスから印象派までの年表を見て、新古典主義とロマン主義が美術史の中のどの位置にいるか考えいます。


 最後に南先生のフルートを聞き比べます。フルートも新古典主義の時代とロマン主義の時代のものと変えています。


 どちらが新古典主義(ベートーベン)の曲か話し合います。
 発表の中で、王政の時代から民衆の時代に表現が変わってきているという意見がありました。絵画と音楽の聞き比べと簡単な資料から自分たちなりにその時代の特徴を探し当てました。


 最後はICEルーブリックで自己評価です。生徒たちも慣れてきました。


 美術科は音楽の履修がないのでこの授業をとても楽しみにしていました。南先生ありがとうございます。
 

SSH特別授業~絵の具をつくろう~

 写真の「元素の周期表」と絵の具の関係はなんでしょう?


 10月21日(土)プラスワン講座の③④限目、美術科1年は化学室でSSH特別授業で絵の具をつくる実験を行いました。
 きっかけは校長先生が下さった一枚の記事、今熊本県立美術館で展示されている伊藤若冲の絵には「プルシアンブルー」という世界で初めての合成絵の具が使われていたという内容でした。この話を化学の先生にしますと、理系の2年生でこの実験は実施されているとのこと。あっという間に話はまとまり、本日の実験となりました。科学の履修がない美術科にとって、初めての化学室。初めての白衣でした。

 

 まず、プルシアンブルーをつくります。

塩化鉄水溶液にヘキサシアニド鉄(Ⅱ)酸カリウム水溶液を少量加えます。

写真が小さいですが、藍色に変わったのがわかりますか?

次にろ紙をたたみます。

ろ紙で濾します。紙に残ったのが顔料です。

同じように、ジンクホワイトとクロムイエローをつくります。

 ジンクホワイトは過熱して、水分を飛ばします。

 出来上がった絵の具は膠で溶いて、絵を描きました。お手本はもちろん若冲です。

 この中から明日の若冲が、または文化財を守る人材が生まれることを祈っています。全員が文化財保護のスペシャリストを目指しているわけではありませんが、一連の活動を通して、「何を守らないといけないのか」「どうやって守ればいいのか」「どうやって調べればいいのか」「誰を頼ればよいのか」を考える力を身に付けてほしいと思っています。第二高校で実践しているICE評価で言いうところの究極のE(Extensions)の学びだと思います。
 今日の実験は、10月29日(日)熊本県立美術館こども美術館で生徒たちが紹介とワークショップの補助をする予定です。こちらも楽しみです。

SSH事業 九州国立博物館バックヤードツアー

10月18日、1年生美術科で九州国立博物館に行ってきました。
 SSH事業として美術科が初めて校外学習を行いました。内容は「文化財保存科学」に関わる講義と見学です。
 行きの車中では、美術科からちょうど展示されている「新桃山展」に関連する美術史の復習を、そして特別講師として日本史の池下先生による安土桃山時代と世界史の関連をレクチャーしていただきました。歴史の面白さを存分に味わい、車中のモニターで岡倉天心を描いた映画『天心』を鑑賞しました。岡倉天心は明治期にフェノロサと日本文化の保護に尽力した人物です。博物館のレクチャーでも、名前があがりました。



 到着後、「あじっぱ」というアジアの文化を小さな子供でも楽しめるゾーンを体験。

 10:00から博物館職員の方による博物館の役割と文化財保存についての講義を受けました。

 博物館の役割は簡単に表現すると「見る」「守る」「調べる」「広める」ということが出来ます。「守る」は特に文化財保存と修復になります。九州国立博物館では最新の機器を用いた調査研究を行っていること、文化財を守るため建物が免震構造になっていることなど様々な施設・設備があることの説明を受け、間近で見学できました。それらは目先の利益ではなく文化財を100年、1000年守ろうとする意思をもって計画されたことも知ることが出来ました。
 午後のハイライトであるバックヤードツアーは写真撮影ができず残念でしたが、3Dプリンターを活用した文化財の再現、CTスキャンを用いた分析によって文化財の研究が深まったこと、そして修復には化学の力と人の技術の双方が必要なのだと理解出来ました。
 この活動で、第二高校SSHで育成を目指している「見つめる力」「きわめる力」「つなげる力」全てが文化財保存の現場で実践されているのを見ることが出来ました。今後につなげていきたいと思います。

県議会棟と教育庁への作品展示

9月20日県議会議長応接室にて、議会棟に展示する絵画を作成した生徒への感謝状贈呈式がありました。昨年度高校美術展に出展された作品の中から選ばれた絵画、写真、書道が展示されています。


 当日は県外議員方々や、教育長、文化課の方々が出席され、第二高校から参加した三人も緊張の面持ちでしたが、生徒代表挨拶も堂々と行うことが出来しました。

 これらの作品を制作中の昨年4月に熊本地震が起きました。作品や石膏像がなぎ倒され、足の踏み場もない彩画室の作品を職員で一つずつ無事を確かめながら元の位置に戻し、そしてまた一緒に制作できる日が来ることを心待ちにしたのを思い出しました。