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苦難を越えて 今、新時代へ
平成28年11月30日(水)
協議テーマ:「地震後の心とからだの健康」
新学期、熊本地震の発生により休校が続いた。幸いにも生徒や保護者、職員は無事だったが、家庭や 地域、そして学校の施設の被災状況は甚大なものだった。
これまでの自然災害においても、子どもの「心のケア」の重要性がいわれてお り、学校全体で生徒の心のケアに取り組んでいる。今回の学校保健委員会では、 学校で実施した心のケア、「心とからだの健康観察」として調査した生徒のアンケ ート結果やスクールカウンセラーによるカウンセリング状況をもとに、意見交換 を行った。今後も、中長期における心のケアについて、学校と家庭が協力・連携 し支援していくとともに、生徒自らがストレスの対処法について理解し、生活に 生かせるように育てていきたい。
地震後から現在まで、教育相談部を中心に実施している心のケアの取り組みを紹介
(1)学校再開前
職員研修 学校再開後の生徒への対応について
講師:SC の疋田先生
(2)学校再開後 5月10日(火)〜(災害発生より約1ヶ月)
- 担任による二者面談
- 心とからだの健康観察(31項目版)(日常版)
- 個別対応・・・基本的にSC疋田先生によるカウンセリング
- SSTプログラム(SST:ソーシャルスキルトレーニング)
2学期は、1年:エゴグラム 2年:「ストレスマネジメント講座」 講師:疋田先生 - 職員研修「震災後の中長期的支援について」 講師:疋田先生
- 避難所生活の生徒へ昼食提供 5月23日〜8月4日
(3)今後の心のケアについて
今後も、スクールカウンセラーによる個別対応、担任による二者面談や通常の健康観察、養護教諭 による健康相談を実施予定。中学校との連携も行い、新入生の心のケアについても検討していく。
質問項目は、4つのストレス・トラウマ反応(過覚醒、再体験、回避・まひ、マイナス思考)に ついての質問、日常生活のストレスについての質問、楽しいことをイメージするような質問で構成 されている。5月の学校再開時・6月・11月とアンケートを実施。高ストレス傾向の生徒は、徐々 に減少傾向である。
スクールカウンセラー 疋田 忠寛先生
災害後に現れる反応・・・トラウマ反応、喪失反応、日常生活上のストレス反応
(1)ストレス反応
- からだ:睡眠、食欲、その他
- 行動:落ち着きがない・はしゃぐ、怒りっぽくなる、退行、ひきこもる
- 気持ち:恐怖・不安、イライラ、落ち込み、なにも感じない、やる気がでない、孤独感
- 考え方:集中できない、考えがまとまらない、いきなり地震のことを思い出す、思い出せない・忘れっぽい、自分を責める
➡誰にでもある、あたりまえの反応、反応の強さや表れ方には個人差がある、安心安全な生活を続けるうちに徐々におさまる
(2)今後の見通し
- 正常なストレス反応が落ち着く:大部分の生徒は、震災前の本来の状態を取り戻す
- 日常生活を取り戻す:学校生活の中で、安心・安全の感覚を取り戻す
- 長期化する災害への影響への対処:日常に戻りきれない部分(転居や避難所・仮設住宅、校舎の問題など)
- 格差の問題:生活の環境の差、学校への順応の差、急性ストレスからの回復の差
- 元々持っている特性が震災の影響で顕在化:震災がなければ出てこなかった問題
- 震災があったことで、周囲が過敏になってしまう可能性
- 長期休みを挟んだことでの学校生活への影響:授業日数、クラスでの人間関係など
- PTSD:半年以降経過して、再体験、麻痺、過覚醒などが出現する。実際はPTSDが起こることは多くはない
(3)今後できること
- 心身の健康の確認:睡眠や食欲、日々の体調の変化などを意識しておく
- 様々なストレスへの対処能力を高めること:ストレスマネジメント、リラクセーションなど
- 日常を大切に:特別なことをするのではなく、当たり前のことは当たり前にでも、出来ない人もいることを頭に置いて
今回の地震では、ボランティアを経験したり、ボランティアの方に出会い、また保健委員の研修会で献血の話をきいたこともあり、自分たちにもできることの一つとして、「献血」について取り組んだ。
- 動画 「Blood献血に行こう~40分で助かる命がある~」
- 展示 献血に関するアンケート結果やクイズ、貧血について
- 職員:半年後や一年後、格差などが顕在化してくるのでは。東署管内の万引き等が増加傾向にある と聞くが、関連があるのかお聞きしたい。→SC:差があることは仕方ないので、差を埋めるのではなく、その格差の中でうまくいくようにし てもらいたい。
- 学校医:半壊・全壊の生徒は何割程度いるのか。→3~4割ぐらい。
- 学校医:順調に回復しなかった時、うつなどを危惧しなければならないのか。 →SC:東北は死亡や全壊が一番多く比較はできないが、日常生活をとり戻すことが一番で、気持ちは後から出てくる。抑うつ的になりやすい、意欲が出てこないなど。3年生の受験の時期などが重なるため出てくる生徒もいる。低年齢では、非行や落ち着かないなど。
- PTA:生徒の中には自分の存在感を持つことは非常に大切だと感じた。今後の震災があったときに、見通しを持って行動できればいいと感じた。
- 生徒:地震の被害を受けて生徒が近くにいたときに、自分から地震の話をしたほうがいいのか。→SC:本人がきつそうな時、地震のこと以外のことで声をかけながら、寄り添いサポートしていく ことが大切。その中で地震のことを本人が話し始めたら話すようにしたらいいのではないか。
- アンケートの結果は興味深い、今後も定期的に行ってほしい・・・坂本先生
アンケート調査では、最初のストレスは 3 年生が多いが、回復も 3 年生が早いことがわかる。「再体験」は長引くようである。「回避・マヒ」自分のことと捉えきれない。「マイナス思考」は性格に要因 があるように思われる。今後も定期的に調査し、生徒の心理状態を観察していただきたい。 - 「一見ストレスを感じていない」ような生徒の把握を・・・元島先生
生徒諸君が作ったものは素晴らしかった。ストレスを回復する上で自分の住まいは大変重要なもので ある。「一見ストレスを感じていない」ような生徒の把握は大変困難である。周囲から愛情を持って接 していただきたい。 - 話をきいてもらいたいことは人間共通の感情である・・・吉住先生
ストレスと眼も関係があり、視力低下する。ヒステリー性の視力障害では、ストレスがあると思い込 んでいるから視力が出ない。親が子どもの話を聞くと翌日には視力が回復していることもあった。話 を聞いてもらいたいことは人間共通の感情である。 - ストレスに対応する力は大切・・・町野先生
第二の校門が倒れているのを見て、気にしていた。ストレスの話を聞いて、ストレスに対する知識を 持っていることは、大変大切だと感じた。 - 生徒の取り組みに感心、献血は本当に大切なこと・・・緒方先生
先生方や生徒の取り組みに感心した。 昔は薬剤師が血液製剤の発注をしていたことを思い出した。献血は本当に 大切である。